midori

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「緑のしずくが音になった」 サンプリング・アート・オブ・ティー、新摘みドリアン待望の3rd アルバム!  失われた時と場所を求めて……。振り返ると、Dorianは何らかの欠落を埋めるように、音と想像力を紡ぎ出してきたプロデューサーなのかもしれない。ロスジェネ世代の彼が惹きつけられたのは、幼少期のかすかな記憶のみが残る好景気に沸く80年代の音楽。なかでも、フュージョンやブギー・ディスコ、はたまたAORやシティ・ポップといった洗練の極まった音楽に対する憧憬をそのまま形にするのではなく、一定の距離を置き、バレアリック、ニュー・ディスコへと変換するアプローチは彼らしく、そして、2010年代らしいマナーであるように感じられた。  そして、前作『studio vacation』から2年。Dorianの想像力はまた別の時間軸と場所を求めて、高く高く飛翔する。その原動力となったのは、ここ数年来、クラブやライヴハウスでダンス・オリエンテッドなパフォーマンスを繰り広げてきた彼が自宅で好んで聴いていたというマーティン・デニーやレス・バクスターに代表されるエキゾチカやチルアウト・ミュージック。さらにそうした音楽嗜好の変化と時を同じくして彼のプロダクションもまた大きな変化を遂げた。そのきっかけとなったのは、七尾旅人がリスナーから寄せられたテーマに応え、その場で作曲、即配信を行う「songQ」プロジェクトだ。昨年2月にDorianは七尾から依頼を受け、1日でリミックス「DORIANの終わらないDEEP DESIRE」を完成。その際に用いたサンプリングの手法が鍵盤から生まれる既視感の高いメロディから彼を解き放ち、新たな音の冒険へと誘っていった。  そして、完成したニュー・アルバム『midori』は、そんなDorianの新境地を鮮やかに映し出す作品だ。鍵盤によるメロディ・メイクをほどよく抑制し、サンプルデリックな豊かな色彩を盛り込んだ本作は、先立つサンプル・フレーズから作品世界を広げていくのではなく、彼の頭のなかに浮かび移ろってゆく音の風景や旋律に合わせてサンプル・ピースを探し、加工して当てはめていくという恐ろしく時間と手間のかかる作業の末に生まれたもの。気の遠くなるようなパズルに興じながら、彼が描こうと試みたのは架空のネイチャー・トリップだ。そのヒントを得るため、制作の初期段階に地元静岡で過去に訪れたことがなかった海や山、茶畑などを巡り、そこで得たヒントを脳内でエキゾチックなストーリーや動きのあるヴィジュアル・イメージへと構築。ネイチャー指向、南国指向のチルアウトなダブやダウンテンポ、低速のビートダウン・ハウスをキャンバスに見立て、様々なレコードから採ったカラフルなサンプル・ピースやスティール・パン、シンセサイザーなどの音素材を配置することで、現代のエキゾチカといえる架空の音楽世界を鮮やかに描き出している。あとは映画を観るように、ソファや肘掛け椅子に深く身を沈め、音楽とともに旅へ出掛けるだけ。新たな新境地を切り開いたDorian、そして本作は未知なる素晴らしき風景へと聴き手を導いてくれるはずだ。 (小野田雄)

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