SONASILE
クラシック/現代音楽等のアカデミックなシーンにおいて日本音楽コンクール第1位受賞(作曲部門)やNHK Eテレ『スコラ 坂本龍一 音楽の学校』への出演等で活躍する一方、電子音楽/サウンドアートのシーンにおいてラップトップによるライブパフォーマンスを断続的に行うなど、ジャンルに捉われない極めて幅広い活動を行っている音楽家の網守将平。これまで音楽シーンと美術シーンの狭間で五線譜とコンピューターを瞬く間に持ち替えてきた彼の単独デビュー作は、自らのピアノやボーカルをエレクトロニックサウンドと共にふんだんに取り入れた、まさかの全編ポップミュージックによるフル・アルバム。 現代音楽~サウンド・アートの領域で活躍し、NHK Eテレの番組「スコラ」に出演などもしてきた音楽家が、PROGRESSIVE FOrMより初アルバムを発表。基調としているのはカットアップの切断面を際立たせた電子音楽で、マーク・フェルやエディションズ・メゴの諸作に通じる先鋭的な音像を展開しているのだが、そこに流麗なメロディーやハーモニー、自身のヴォーカルなどを注ぎ込み、全編をポップ・ミュージックとして成立させている。特に、柴田聡子とBabiをヴォーカリストに迎えたノーブルでキャッチーなエレクトロ・ポップ"Kuzira""env Reg."が出色の出来。古川麦が作詞とギターを担った"Mare Song"のフォーキーな叙情も美しい。アカデミックな地平からのポップスへのトライアルという、坂本龍一や渋谷慶一郎らの文脈にある作品として捉えられるだろうし、最新モードを歌モノに取り込んでいくアプローチにおいて、冨田ラボ『SUPERFINE』と共通するものも感じられた。広く聴かれるべき傑作だ。