Squall

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小森田実の1st(ソロデビュー)アルバム。今作と同日にシングル「夏だけの女神(ディアーナ)」がリリースされた。 小森田実(コモリタミノル名義の方が主か)は、SMAPに提供した「SHAKE」「ダイナマイト」「たいせつ」「らいおんハート」「BANG! BANG! バカンス!」を始め、多くのアーティストへの楽曲提供をしてきた作編曲家。 彼は1983年に小森田実 & ALPHAでデビューしており、作編曲家よりも先にシンガーとしてデビューしている。 ちなみに、ALPHAは後にThe ALPHAと改名し、チャゲ&飛鳥のサポートをするバンド。 小森田はシンガーソングライターとしてシングル6作・オリジナルアルバム4作をリリースした。長らくそちらの活動は休止状態だったが、2020年になってコモリタミノル名義での新曲「Bunny Bunny」を突然配信でリリースした。 「夏だけの女神(ディアーナ)」は今作と同日にリリースされたソロデビューシングル曲。オメガトライブおよび杉山清貴を思わせるリゾートポップナンバー。伸びやかなボーカルも相まって、サビはキャッチーそのもの。ギターのカッティングと煌びやかなシンセを主体としたアレンジがメロディーのポップ性を強める。 歌詞はリゾート地でのひと夏の恋を描いたもの。タイトルからしていかにも80年代的な眩しさがあるが、詞世界も同様。 80年代の終わりというと、この手の音楽が廃れてしまっていた印象があるのだが、その時代にこの曲が生まれたことは意外性があって面白い。 「Sweet My Girl」は前の曲に続いての開放感のあるポップナンバー。懐かしい雰囲気を持ったメロディーを楽しめる。高揚感を持ったサビではメロディーメーカーとしての実力を見せつけている。60年代のアメリカンポップスを思わせるアレンジがされており、特にコーラスワークが凝っているのが特徴。 歌詞はタイトル通りの恋人と過ごす時間が描かれたもの。恋人に振り回されているイメージがある。小森田のボーカルとそうした詞世界の親和性が高く、どことなくコミカルな雰囲気を持った曲となった。 全く陰を感じさせない根っからの明るさは小森田ならでは。 「Daydream」はここまでの流れを落ち着けるミディアムナンバー。聴き心地の良い穏やかなメロディーが全編に渡って展開されている。小森田の高音ボーカルが冴え渡るサビはかなり耳に残る仕上がり。全体的に音の数は少なめで、ボーカルを際立たせている。渋さの中に清涼感も感じられる間奏でのギターソロはこの曲の聴きどころ。 歌詞はリゾート地の昼下がりを思わせるもの。木陰でうたた寝する恋人を眺める男性の想いが綴られている。 メロウな部分でもしっかりメロディーセンスが発揮されている。 「ドキドキTALKING」はアマチュア時代にポプコンの九州大会でグランプリを受賞した曲。1986年には今井美樹に「American Breakfast トキメキ添え」として提供している。そちらとは歌詞違い。 ディキシーランド・ジャズのテイストを取り入れたポップナンバー。楽しげな雰囲気を持ったサウンドがメロディーをよりポップなものにしている。 歌詞はバーを舞台に、居合わせた客に一目惚れした男性を描いたものだろうか。全体的にノリを重視したような言葉選びが特徴的。 アマチュア時代に披露された際はどのようなアレンジだったのだろうか?音源があれば聴いてみたいところ。 「Twilight Dejavu」はボサノバのテイストを取り入れたミディアムナンバー。訴求力を持ったサビのメロディーに心を掴まれる。メロウかつ清涼感のあるサウンドで聴かせる。どことなく哀愁を帯びたホーンの音色がたまらない。タイトル通り、夕暮れ時の景色がイメージできるようなサウンドである。 歌詞はかつての恋人との別れを回想したもの。情景が浮かんでくるような繊細な描写とハイトーンボーカルが切なさを演出する。 アルバムの中間というポジションがよく似合う曲だと思う。 「スコール」は今作と同日に発売されたシングル「夏だけの女神(ディアーナ)」のB面曲にして、今作のタイトル曲。前の曲に続いてのミディアムナンバー。広がりのある美しいメロディーと伸びやかなボーカルで聴かせる。冷ややかな響きを持ったシンセが使われたイントロからして引き込まれる。 歌詞は恋人との最初の出逢いを回想したもの。ビーチにいる時に突然降ってきた雨を共にやり過ごして仲を深めたようだ。 メロディーとサウンドが自分好みで、今作の中でも特に好きな曲。こちらが表題曲になっても全く違和感の無いような曲だと思う。 「カジノ・カジノ」は1986年に森川美穂に提供した「姫様ズーム・イン」の歌詞違いのセルフカバー。ここまでの流れから一転して、80年代的なシンセサウンドが印象的なポップナンバー。それが目立っているのはイントロだけなのだが、それでもインパクトが強い。親しみやすくしっかりと耳に残るサビは職人技。 歌詞はタイトル通りギャンブルを思わせるフレーズが並んでいる。緊張感のある場面も描かれているが、それでも全体としてはポジティブな詞世界となっている。この辺りが小森田らしさなのだろう。 この曲はサウンドの古臭さがクセになる。むしろ一周回って斬新に聴こえる。 「夜のパズル」は前の曲からの流れを落ち着けるミディアムナンバー。全編に渡って優しく美しいメロディーが展開されている。この曲では随所でホーンがフィーチャーされており、それが夜のイメージを作り出している。 歌詞は少々難解なのだが、映画のワンシーンのようなイメージがあるもの。この曲の舞台はどこなのだろう。どういった状況なのかも分かりにくいが、それでも切なさを持った詞世界なのは伝わってくる。 今作では珍しく、陰を感じさせる曲になっていると思う。 「シーズン」は今作のラストを飾る曲。ここまで来てようやくのバラードナンバー。訴求力のある美しいメロディーには一聴しただけでも魅かれる。サウンド面はシンセ主体で、全体的な音の数は少なめ。無機質ながらにどこか温かみのあるシンセの音色はこの時期ならでは。 歌詞は恋人と海で夕暮れを待つ姿を描いたもの。鮮やかな情景描写が冴え渡る詞世界であり、聴いているだけでも海の光景が浮かぶような詞世界となっている。 小森田というとポップな曲のイメージが強くなりがちだったのだが、バラードにおいても優れたメロディーメーカーであることがよくわかる名バラード。 あまり売れた作品ではないので、中古屋では滅多に見かけない。 ジャケ写から受けるイメージの通りの作風となっており、オメガトライブを彷彿とさせる曲が並んでいる。どの曲もメロディーが強く、作編曲家として確固たる地位を築いたのも当然だと思わされるほどの充実感がある。 シティポップリバイバルが続く今だからこそ再発されるべき作品。

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